館蔵品展 空想のきらめき~シュルレアリスムとイメージ世界~ [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
館蔵品展
空想のきらめき~シュルレアリスムとイメージ世界
~ Glittering of imagination The visionary world of Surreal and Fantasy From the collection of the Nara Prefectural of Art
黄いろのトマト 西岡 義一
シュルレアリスム(Surréalisme)とは芸術の形態で超現実主義ともいう。
「絶対的現実」「過剰なまでに現実」という意味である。
また、シュルレアリスムの芸術家を「シュルレアリスト(仏: surréaliste)」と呼ぶ。
シュルレアリストが、コラージュや自動筆記といった偶然性の強い手法で作る作品などは一見非現実的だが、彼らは、主観や意識や理性が介在できない状態で偶然できたものや、そもそも意識の介在から解き放たれた夢の中からこそ、普段気付かない現実=超現実が出現する。
シュルレアリスムってなんだが難しいし、よくわからないという人にこそこの展覧会は見ていただきたいというくらいよく練られた構成で初心者にわかりやすい。
特にパネル類は、体系的かつ理解度UPに工夫されていてあーなるほどと納得できるほど説得力があり、わかりやすい。
また、展示作品も色のきれいな、明度の高い色を使っているものをセレクトされていて色彩という意味でも親しみやすい。
チェスキーニ氏の肖像 絹谷 幸二
これなら、アート初心者にも敷居が低くなっているので気楽に鑑賞できる。
人間の「想像・創造」力を喚起し、人々を空想の世界に誘う絵画。とりわけイメージの解放運動と称されたシュルレアリスム(超現実主義)や、様々な色と形によって生み出された心象風景は、千変万化する人間の真情を捉え揺さぶり、そして琴線に触れるものだといえるであろう。
同時に人間の「想像=創造」する力は無限であり、表現における可能性は時代と共に推移することにも気付かされる。
芸術の歴史の図解パネルは、わかりやすく書かれているので頭の整理がしやすく時代の流れをよく理解できる。
本展は奈良県立美術館が所蔵する近・現代コレクションの中で、シュルレアリスムを推進した日本人画家たちの作品や、影響を受けた作品、さらにはシュルレアリスムから派生した抽象表現主義の作品などに焦点を当てており、その豊饒なる心象世界、イマジネーションの世界に浸れる。
多忙な現代人の日常生活や、日々の喧噪を忘れさせてくれる幻想と奇想、そして夢の世界を、十人十色の感性で鑑賞者それぞれが自由な感覚で展覧できる。
現代美術を理解する上でとても大切なシュルレアリスムをわかりやすく展示しているので、美術ファンはもちろんシュルレアリスム初心者やお子様にもおすすめ。
日本におけるシュルレアリスム活動を 出品作家数21名 出品点数82点
入場者には、詳しい解説のついた美しい目録がプレゼントされるので、帰宅後読み返すとよりいっそう頭に入る。
主催・会場 奈良県立美術館
期間 2011年(平成23)7月16日(土)~8月28日(日)
月曜休館 (39日間開催)
※開館時間 午前9時~午後5時
備考〇ボランティア解説(随時)
〇教職員に引率された県内の小・中・高校及びこれに準ずる学校の生徒、団体鑑賞(20名以上)については、希望によって担当学芸員による解説を行う。(電話で要予約)
〇陳列順に作品解説した小冊子を入館者全員に配布。
※教職員に引率された奈良県内の小・中・高校及びこれに準ずる学校の生徒、身体障害者手帳・療育手帳及び精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方と付添の方1名、65歳以上の方、外国人観光客と付添の観光ボランティアガイドの方は無料
※毎週土曜日は小・中・高校及びこれに準ずる学校の児童・生徒は無料
観覧料 一般400(300) 大・高生250(200) 中・小生150(100) ()内は20名以上団体
【追加出品】
「ショートピース」のパッケージは筆者が研究をしているレイモンド・ローウィのデザインだが、タバコ「ロングピース」のパッケージデザインで有名な田中 一光のポスター作品を展示しており、大変興味深い。
日本のデザインの先駆者として、大きな影響を与えた田中が奈良出身とは知らなかった。
遺族から寄託された田中の作品が奈良県立美術館にあり、今回はその一部を展示しているという。
ならシルクロード博’88のポスター制作やフェラガモなども展示されている。
この田中一光展だけでも見どころ満載なのに一枚のチケットで両方の展覧会が見られるのはかなりお得。
田中一光略歴
1930年1月13日奈良市生まれ。1950年京都市立美術専門学校(現京都市立芸術大学)卒業。
鐘淵紡績、産経新聞等を経て、1960年日本デザインセンター創立に参加。
1963年田中一光デザイン室を主宰。タバコ「ロングピース」パッケージデザイン、東京オリンピック・札幌冬季オリンピックのメダルデザイン、ロフトのシンボルマークなどのデザインを行なう。
また、日本万国博覧会政府館1号館展示設計責任者、セゾングループのクリエイティブ・ディレクター、無印良品のアートディレクター、銀座セゾン劇場のアートディレクターも歴任するなど、日本のデザインシーンに多大な影響を与えた。2002年享年71歳にて逝去。
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