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沖縄県立博物館・美術館企画展 本土復帰40周年記念  田中一村展 ~琉球弧で開花した美の世界~ [美術館  ARTNEWS アートニューズ]

沖縄県立博物館・美術館企画展 本土復帰40周年記念

田中一村展 ~琉球弧で開花した美の世界~

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「不喰芋と蘇鐵」田中一村画 個人蔵・田中一村記念美術館寄託[コピーライト]2012Hiroshi Niiyama

 幼いころから画才を発揮し、神童と謳われながらも画壇の表舞台に立つことなく、無名のままその生涯を閉じた画家・田中一村(1908-77)。

その生涯は波乱に満ちたものであったが、自らの信念を固く貫き、絵を描くことにすべてを捧げたその生き様は、今もなお多くの人々に感動を与えている。

田中一村の人生観のみならず、その作品のファンは多い。筆者もその一人である。

 50歳の時、単身奄美に渡った一村は、染色工として働きながら南島の自然を描くことに没頭。

わずかな給料のほとんどを画材に費やし、よい作品を創造することに一生懸命だった一村。

染色工としての腕も抜群だったと聞く。

そうして生み出された静謐で装飾性の高い作品群は、息をのむほどの美しさを湛えている。

生前は画壇と距離を置き、それゆえに正当な評価を受けることがなかった一村。しかしその高潔な精神は、経済優位の社会がゆらぎ、物事の本質が問われるようになった現代において、ますます輝きを放っている。

筆者には、一村は、フランスの画家アンリ・ルソーの生き方や、画質を彷彿とさせるのだ。アンリ・ルソーは、想像で描いたが、一村は奄美で実際に写生をした。

 この展覧会では、一村終焉の地・奄美大島にある田中一村記念美術館の収蔵・寄託作品から、奄美時代の代表作を含めた貴重な作品群を展示。

幼少期の瑞々しい感性にあふれた作品から、奄美で独自の様式を確立するに至るまでの“美”の軌跡を紹介。

 奄美と沖縄はともに琉球弧の島として、亜熱帯の自然、風土に生き、固有の生活文化を培ってきた地域。

1945年の敗戦の後、ともに日本の行政区分から分離され、奄美は53年に、遅れて沖縄は72年に本土に復帰。

2012年は沖縄の本土復帰40年にあたります。琉球弧で開花した一村の美の世界は、時代の大きな節目を迎える沖縄にとって、奄美・沖縄の自然風土の素晴らしさを改めて認識させてくれる。

一村の強く豊かな魂のメッセージを感じ取って、人生を見つめ直すことも、この殺伐とした世の中には必要だ。

〈第1章〉若き天才画家・米邨 19161930822歳)

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「蘇鐵と躑躅」田中一村画1926 田中一村記念美術館蔵[コピーライト]2012Hiroshi Niiyama

彫刻家であった父・稲邨(とうそん)の指導のもとで早くから画才を発揮した一村は、7歳にして「米邨」の雅号を与えられる。

17歳で東京美術学校の日本画科に現役入学を果たすが、わずか2ヶ月で退学。

その年の12月には有志による「田中米邨画伯賛獎会」が開催され、一村は若くして画家としての大きな一歩を踏み出す。

また、この時期の一村は先達の作風を熱心に模写し、自己の研鑽に励んでいる。

幼少期に描いた色紙や水墨画、南画家としての力量を示す作品などを展示。

才能に溺れることなく、真摯に絵に向かう若き一村の姿を紹介。

※主な展示作品…幼少期の色紙、水墨画、扁額、衝立など約10

〈第2章〉新しい表現を求めて~団体展への挑戦と挫折 193119572349歳)

 昭和初期、一村は親戚の川村幾三氏の元に頻繁に通い、その住まいのある千葉寺周辺をスケッチする。

そのスケッチをもとに、一村はこれまでの南画とはまったく異なる作風を描き、新しい表現を模索する。

昭和22年、「白い花」が青龍社展に入選。その後、団体展(日展、院展)へ出品を続けるが入選を果たせず、昭和33年の院展落選直後に一村は奄美行きを決意。

南画と決別し、写生をもとにした新しい表現に挑んだ一村の作品を展示。

団体展への挑戦と挫折を繰り返す中、徐々に自らの様式を完成させていく様子を紹介。

※主な展示作品…千葉時代の花鳥画、団体展出品作、九州・四国・紀州の色紙、戦時中の観音像など約35

〈第3章〉一村が描いた奄美の自然 1958197750歳~69歳)

 昭和33年、一村は単身奄美に移住。畑を耕し自給自足の生活を送りながら紬工場で働く。

5年間働いたのち、3年間絵画制作に専念し、奄美の自然を題材にした大作を描き上げる。

しかし心身の無理がたたり体調を崩した一村は作品を発表することなく、昭和52年、心不全のため69歳で生涯を閉じた。

3章では、一村の画業の集大成といえる奄美時代の作品を展示。

一村が生み出した独自の美の世界は、ともに琉球弧の島嶼である奄美・沖縄の自然の豊かさを改めて認識させてくれる。

※主な展示作品…奄美時代の作品、スケッチ、一村が撮影した奄美の写真

作品点数は変更の場合もあり。

大変よく工夫された素晴らしい展覧会だ。

心を休めに沖縄の一村展に行くのも悪くはない。必見の展覧会だ。

【会期】2012330日(金)~56日(日)

【開館時間】9001800(金・土は2000まで)

※入館は閉館の30分前まで

【休館日】月曜日(430日は開館、翌51日休館)

【会場】沖縄県立博物館・美術館企画ギャラリー1.2

所在地:沖縄県那覇市おもろまち3-1-1

tel098-941-8200

【入場料】一般:1,000800)円、高校・大学生:700560)円、

小学・中学生:300240)円

※( )は20人以上の団体料金

【主催】文化の杜共同企業体/沖縄県立博物館・美術館

【特別協力】鹿児島県奄美パーク・田中一村記念美術館

【共催】沖縄タイムス社、琉球放送

【協賛】沖縄高速印刷㈱、オリオンビール㈱、㈱国建、

昭和化学工業㈱、㈲東洋商会、琉球ガラス村グループ

【後援】鹿児島県、奄美市、奄美群島広域事務組合、沖縄奄美連合会、

NHK沖縄放送局、琉球朝日放送、沖縄ケーブルネットワーク、

エフエム沖縄、ラジオ沖縄、タイフーンfm、FMよみた

【図録】110頁、A4判

*企画監修:比嘉加津夫(同人誌『脈』主宰)

西村立子(画家・沖縄県立芸術大学教授)

*企 画:沖縄県立博物館・美術館指定管理者 文化の杜共同企業体(担当:金城美奈子)

 この図録が大変詳しく解説されており、新たな一村像を発見するのに大変役立つ。

帰宅してからも、ふと心がざわついた時に眺めると心が和やかになる。そんな一冊だ。

☆読者プレゼント 

   1020名様にご招待券 プレゼント

   あて先 :  loewy@jg8.so-net.ne.jp

   件名:展覧会名と会場名

   本文:ご住所、お名前

   をお書きの上どしどしご応募下さい。

   発送をもって当選と代えさせていただきます。

蘇鉄と躑躅No04.jpg
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