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ベルリン国立美術館展  学べるヨーロッパ美術の400年 [美術館  ARTNEWS アートニューズ]

ベルリン国立美術館展 

学べるヨーロッパ美術の400 

8ヨハネス・フェルメール《真珠の首飾りの少女》1662-1665年頃 ベルリン国立絵画館.jpg 

ヨハネス・フェルメール《真珠の首飾りの少女》1662-1665年頃

ベルリン国立絵画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin  

 ベルリン国立美術館と共同で開催する「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」とが、国立西洋美術館で開催されており、先日来場者が30万人を超えた。 

芸術的想像力あるいは造形感覚というものは、ある程度は伝統や教育に負うものと解釈されがちだ。

しかしそれでもなお、ヒトのDNAに埋め込まれていたのかもしれない南北ヨーロッパの造形感覚の違いを目の当たりにする時、古代以来の複雑な西ヨーロッパ文化の奥深さや歴史の重みをひしひしと感じることがある。 

4ベルナルディーノ・ピントゥリッキオ《聖母子と聖ヒエロニムス》1490年頃  絵画館 (628x800).jpg 

ベルナルディーノ・ピントゥリッキオ《聖母子と聖ヒエロニムス》1490年頃 

ベルリン国立絵画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin

 この展覧会では、通常の時代順に展示するやり方ではなく、イタリア絵画や彫刻と、北方絵画や彫刻を同時に展示するといった画期的な方法を試みている。

この方法により、歴史とともに成熟したヨーロッパ美術の流れを体感的に肌で感じ取れるのだ。

例えば、イタリアのデッラ・ロッビアの優美な聖母とドイツが誇る天才彫刻家、リーメンシュナイダーの素朴ながらも人を魅了して止まない木彫の対比。

 2ティルマン・リーメンシュナイダー《龍を退治する聖ゲオルギウス》ボーデ美術館 (590x800).jpg

ティルマン・リーメンシュナイダー《龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス》1490年頃

ベルリン国立美術館彫刻コレクション  (C)Staatliche Museen zu Berlin 

 

また、オランダを代表してはフェルメールとレンブラント。

  9レンブラント派《黄金の兜の男》1650-1655年頃  絵画館 (599x800).jpg

 レンブラント派《黄金の兜の男》1650-1655年頃 

ベルリン国立絵画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin  

イタリアの白い羊皮紙の上に描かれたボッティチェッリの簡素にして妖艶な素描に対する、ミケランジェロの情念ほとばしる素描の違い。

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サンドロ・ボッティチェッリ《ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:愛の原理を説くウェルギリウス(第17歌)》1480-1495年頃 ベルリン国立素描版画館   (C)Staatliche Museen zu Berlin  

 13bサンドロ・ボッティチェッリ《ダンテ『神曲』「煉獄篇』挿絵素描より:14第31歌」1480-95年 (800x553).jpg 

 サンドロ・ボッティチェッリ《ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:地上の楽園、ダンテの罪の告白、ヴェールを脱ぐベアトリーチェ(第31歌)》1480-1495年頃 

ベルリン国立素描版画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin  

などなど、絵画、彫刻、素描など合わせて107点を展示している。  

14ルーカ・シニョレッリ《人物を背負うふたりの裸体像》1490-1495年頃 素描版画館 (604x800).jpg

 ルーカ・シニョレッリ《人物を背負うふたりの裸体像》1490-1495年頃 

ベルリン国立素描版画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin 

   15ミケランジェロ・ブオナローティ《聖家族たのめの習作》 1503-1504年頃 素描版画館.JPG 

ミケランジェロ・ブオナローティ《聖家族のための習作》 1503-1504年頃 

ベルリン国立素描版画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin  

このようなヨーロッパ全体の美術の歴史を学べるようなコンセプトの展覧会はあるようでなかなかないものだ。 

 鑑賞者は、それぞれの美術展に足を運び、鑑賞し、また、書物を駆使しながら、その全体像をつかまなければならない。

それらは、大変面倒で時間のかかる作業であり、なかなか実行できるものではない。

この展覧会は、それらの煩雑さを除去し、わかりやすく教授しているので、この展覧会をきっかけとして美術ファンがよりいっそう増すのではないかと筆者は期待している。

 3ドナテッロの工房《聖母子とふたりのケルビム》1460年頃 ボーデ美術館.jpg 

ドナテッロの工房《聖母子とふたりのケルビム》1460年頃

ベルリン国立美術館彫刻コレクション  (C)Staatliche Museen zu Berlin

 11ジャン=アントワーヌ・ウードン《エビと魚のある静物》1777年頃 ボーデ美術館.jpg 

ジャン=アントワーヌ・ウードン《エビと魚のある静物》1777年頃 

ベルリン国立美術館彫刻コレクション  (C)Staatliche Museen zu Berlin   

 筆者はこの展覧会に先駆け、2011年夏、ベルリンに取材に出かけている。

英語訳” Renaissance Faces”の特別展の記者発表会にご招待をいただいたため、参加して来た。

この展覧会は、Metropolitan Museum of Artとの共同企画でベルリンのベルリン国立美術館群のひとつボーテ美術館で開催された。

世界各国からジャーナリスト総勢1000名が集まり、大変注目度が高かった。

ポーランドのクラクフのチャルトリスキ美術館所蔵の絵画、レオナルド・ダ・ヴィンチの名作、『白貂を抱く貴婦人』が初めてベルリンとニューヨークに来るということで話題であった。

美術館の特別許可を得て撮影して来た。

  白貂を抱く貴婦人.jpg

 レオナルド・ダ・ヴィンチ  《白貂を抱く貴婦人》 1489年から1490年ごろ

クラクフ チャルトリスキ美術館

注 この絵は「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」には

出品されません。

 http://www.smb.museum/smb/gesichter/ 

また、同じくベルリン国立美術館群のひとつ絵画館には、4日間通い、鑑賞するくらいその美術館の内容は大変充実していた。

レンブラントだけで工房作品も含むと12枚も所蔵している。

その収蔵量と質の高さには驚かされた。

  1エルコレ・デ・ロベルティ《洗礼者聖ヨハネ》1480年頃  絵画館 (464x800).jpg 

エルコレ・デ・ロベルティ《洗礼者聖ヨハネ》1480年頃 

ベルリン国立絵画館 (C)Staatliche Museen zu Berlin

   5ルーカス・クラーナハ(父)《ルクレティア》1533年 絵画館.jpg 

ルーカス・クラーナハ(父)《ルクレティア》1533

ベルリン国立絵画館 (C)Staatliche Museen zu Berlin

 6ルーカス・クラーナハ(父)の工房《マルティン・ルターの肖像》1533年頃 絵画館.jpg 

ルーカス・クラーナハ(父)の工房《マルティン・ルターの肖像》1533年頃

ベルリン国立絵画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin 

 7アルブレヒト・デューラー《ヤーコプ・ムッフェルの肖像》1526年  絵画館 (608x800).jpg

 アルブレヒト・デューラー《ヤーコプ・ムッフェルの肖像》1526

ベルリン国立絵画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin 

  10ヤーコプ・ファン・ロイスダール《滝》1670-1680年頃 絵画館l.jpg 

ヤーコプ・ファン・ロイスダール《滝》1670-1680年頃 

ベルリン国立絵画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin   

 この2つの美術館は場所が離れており、バスで移動しても約30分ほどかかる距離である。

その2つの美術館の作品をひとつの美術館である、ここ国立西洋美術館で並べて展示できるなどベルリンっ子もびっくりの企画であることをぜひご理解いただきたい。 

12ジェン=バティスト・シャルダン《死んだ雉と獲物袋》1760年 絵画館 (666x800).jpg 

ジャン=バティスト=シメオン・シャルダン《死んだ雉と獲物袋》1760

ベルリン国立絵画館  (C)Staatliche Museen zu Berlin   

 また、滞在中Lange Nacht der Museenが行なわれた。

http://www.lange-nacht-der-museen.de/

これは、筆者は「ミュージアムナイト」と訳していたが、夜通しベルリンにある美術館を開放して、その切符を買った人は、好きな美術館をはしごできるというもの。

また、ベルリン市が全面的にバックアップしているため、市交通局の協力の下、地下鉄やバスなど夜通し運行する。

各美術館間は無料のシャトルバスもあり、思いっきり夏の芸術を堪能しようというお祭りだ。

その発起人の方との出会いが大変面白かった。

筆者はアポイントが取れた“Lange Nacht der Museen”の広報担当のかたのところに行く途中、部屋がわからずうろうろしていたところを親切に声をかけて案内してくれた人ウルフ氏が発起人であったのだ。 

当初は5館しか賛同の美術館がなかったが、今ではベルリンにあるほぼすべての私立国立私立を問わず美術館が参加しているのだ。

 開会式にはベルリン市長が銅鑼を鳴らして祭りを盛り上げる。

開催事務局のカメラマンが筆者がベルリン市長にインタビューしているところを撮影し、その写真を広報のかたが親切にも送って下さった。

浦ベルリン市長1108SH-20110827-1779 (800x532).jpg

 このように多くの芸術品を所蔵するベルリン国立美術館。

ただ単に美しさを鑑賞するだけではなく、一歩進んでヨーロッパ美術の歴史やその流れを体感できる展覧会はまたとない。

図録も大変詳しくわかりやすく書かれており、この一冊があればヨーロッパ美術の概要を掴み、比較することができよう。

また他の機会に作品を鑑賞する際のいい教科書になるであろう。

上野ではマウリッツハイス展も開催されており、日本人としては大変喜ばしい展覧会だ。

ぜひお見逃しなく。   

会期: 2012613日(水)~917日(月・祝日)

開館時間: 午前930分~午後530

毎週金曜日:午前930分~午後8

※入館は閉館の30分前まで

休館日: 月曜日(917日は開館)

会場: 国立西洋美術館 企画展示室

主催: 国立西洋美術館、TBS、読売新聞社

後援: 外務省、ドイツ連邦共和国大使館、BS-TBSTBSラジオ、J-WAVE 特別協賛: SMBC日興証券

協賛: セコム、損保ジャパン、日本写真印刷

協力: ルフトハンザ カーゴ AG、ルフトハンザ ドイツ航空、日本航空、ヤマトロジスティクス、 JR東日本、西洋美術振興財団 

観覧料金: 当日:一般1,500円、大学生1,200円、高校生500

       団体:一般1,100円、大学生800円、 高校生500 

※団体料金は20名以上。 ※中学生以下は無料。 

 ※心身に障がいのある方および付添者1名は無料  

(入館の際に障がい者手帳をご提示のこと) 

※本展の観覧券で常設展示も併せて展覧可。 

☆読者プレゼント    

510名様にご招待券 プレゼント   あて先 :  loewy@jg8.so-net.ne.jp    件名:展覧会名と会場名   本文:ご住所、お名前   をお書きの上どしどしご応募下さい。  

発送をもって当選と代えさせていただきます。   

巡回情報: 2012109日(火)~122日(日) 九州国立博物館


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コメント 1

職務履歴書

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
by 職務履歴書 (2012-10-18 03:11) 

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