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オーバリン大学アレン・メモリアル美術館所蔵 メアリー・エインズワース浮世絵コレクションUkiyo-e Prints from the Mary Ainsworth Collection, Allen Memorial Art Museum, Oberlin College [美術館  ARTNEWS アートニューズ]

オーバリン大学アレン・メモリアル美術館所蔵 

メアリー・エインズワース浮世絵コレクション

Ukiyo-e Prints from the Mary Ainsworth Collection,

Allen Memorial Art Museum, Oberlin College

 

                                                                                                            画像はすべて アレン・メモリアル美術館蔵



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喜多川歌麿《美人気量競 五明楼 花扇》アレン・メモリアル美術館蔵

 

 世界で1点しか存在しない、または現存数の少ない貴重な初期浮世絵などを所蔵するエインズワースの浮世絵コレクションをまとめて紹介する展覧会が、静岡市美術館において好評開催中だ。

 アメリカ・オハイオ州オーバリン大学のアレン・メモリアル美術館(Allen Memorial Art Museum, Oberlin College)には、1950年にアメリカ人女性メアリー・エインズワース(Mary Ainsworth)の寄贈した1500件以上の浮世絵や版本が所蔵されている。

 エインズワースは、明治39(1906) 年来日し、浮世絵に魅了された。

最初に収集したのは初期浮世絵で、世界に1点しかない稀少作を含め100点近くある。

以降約25年間にわたり初期浮世絵から幕末の北斎・ 広重まで幅広く収集した。

コレクションの過半数を占めるのは歌川広重の作品で、保永堂版《東海道五拾三次之内》や《名所江戸百景》などの有名作に初摺や優品が多く、質量共に大変優れている。

また、六大浮世絵師(春信、清長、歌麿、写楽、北斎、広重)の作品も揃い、エインズワースの浮世絵コレクションで浮世絵の歴史を辿ることができるくらいその収集はバランスがよい。

しかし、エインズワースの浮世絵コレクションは一部浮世絵研究者の間では注目されていたが、アメリカでもあまり紹介される機会はなかった。

この展覧会は、現地調査を行ない、それをもとに選りすぐりの200点を展観するもの。

エインズワースの浮世絵コレクションの全容 を日本に紹介する初めての里帰り展だ。

 

 

☆見どころ

・日本初!エインズワースの浮世絵コレクションをまとめて紹介

・世界で1点!現存数の少ない貴重な初期浮世絵も展示

・これぞ浮世絵名品展!六大浮世絵師の優品が一堂に

・浮世絵で江戸の旅!北斎の赤富士で知られる《冨嶽三十六景》や広重の代表作 《東海道五拾三次之内》、《名所江戸百景》は名品を厳選して紹介

 

☆メアリー・A・エインズワース(Mary Andrews Ainsworth

1867年:アメリカ・イリノイ州ヘンリー郡ジェネシオで生まれる

1885年:18歳 オーバリン大学に入学

1889年:22歳 オーバリン大学卒業

1905年:38歳 アジアを旅行、翌年来日、浮世絵に出会う

      以降、約25年かけて浮世絵収集がはじまる

1950年:83歳で死去。

死後、遺言により、膨大な浮世絵版画・版本のコレクションは母校・オーバリン大学に寄贈

 

☆目利きの米国女性エインズワース

メアリー・エインズワースは、アメリカでも早くに浮世絵の収集をはじめたコレクターの一人だ。

海外のなかでも浮世絵コレクターが多いアメリカだが、有名なコレクターのほとんどが男性である。メアリー・エインズワースは、その中で肩を並べる目利きの女性コレクター。

日本でも昭和13(1938)年に出された浮世絵コレクターの番付表「古今東西浮世絵数寄者総番付」の「外人数寄者いろは番付」内にその名が掲載されている。

 

メアリー・エインズワースのコレクションは 「初期浮世絵」からはじまったという。

彼女が最初に手に入れた浮世絵は、石川豊信の「初期浮世絵」。

 

☆世界で一点しか見つかっていない稀少作!

6 鳥居清倍《雪中傘を差す遊女と侍女》1950.148.jpg

鳥居清倍《雪中傘を差す遊女と侍女》

 

美人画で有名な鈴木春信の役者絵や天神図 これも世界で1点しか見つかっていない。

さらに娘が水にさらす布の「きめ出し」 というエンボス技法が際立つ 鈴木春信《「六玉川 調布の玉川」》も見逃せない。

 


7 鈴木春信《もんがく上人 市川団十郎平の清もり 沢村宗十良》》1950.226.jpg

鈴木春信《もんがく上人 市川団十郎平の清もり 沢村宗十良》


色を使わず表現する 錦絵の祖・鈴木春信の“白”。

余白の美を大切にする日本人の美意識を具現化している。

團十郎の「團」の字は、十一代目 市川海老蔵が指摘しているように本来「團」だが、ここでは美術館提供のキャプションを採用することとする。

 

  ☆「大首絵」(役者や美人の胸像)の優品がずらり 顔の特徴にも注目。

     画像掲載はできないが、勝川春英 《三代目瀬川菊之丞の油屋おそめ》のかんざしの先には 菊の蝶(菊之丞)が描かれているのをぜひ鑑賞していただきたい。

 

  歌川国芳《大物浦平家の亡霊》には、よく見ると大波の先には平家の亡霊。

様々な色のシルエットが描かれている。

  十一代目 市川 海老蔵が現在、歌舞伎座の七月大歌舞伎で「通し狂言 星合世十三團」(ほしあわせじゅうさんだん)において十三役(報道発表は十三役だが、実際には十四役)を演じているが、『義経千本桜』のうちの大物浦(だいもつうら)の場面で渡海屋銀兵((とかいやぎんぺい)実は平知盛(たいら の とももり)も役の一つ。

   そのエピソードを現在行われている歌舞伎と当時の浮世とかい絵を両方考えながら鑑賞すると楽しみが倍増する。

 

5 歌川国芳《大物浦平家の亡霊》1950.665.jpg

                                      歌川国芳《大物浦平家の亡霊》

   

    ☆七月大歌舞伎

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/623

 

  また、ゴッホも模写した歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》は、船がないものが 一般的だが、船二艘を描く 変わった摺もメアリー・エインズワースは所蔵していた。

 

1 歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》.jpg

  歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》

  

  さて、喜多川歌麿の7枚続の浮世絵《見立唐人行列》を、栃木県那須塩原市の北貞夫医師が自宅で保管していることが2019712日、発表された。

   海外の数カ所の美術館は所蔵しているが、国内で7枚全てがそろっているのが確認されるのは初めてだ。

   その海外の美術館の一つが、このオーバリン大学アレン・メモリアル美術館所蔵 メアリー・エインズワース浮世絵コレクションなのだ。

   《見立唐人行列》は179798(寛政910)年の作品とされ、朝鮮王朝の外交使節「朝鮮通信使」を女性に置き換えて描いている。異国風の帽子をかぶったり、旗を持っていたりする姿が描かれている。

   塩原市の北貞夫医師所蔵のものは個人蔵なので、簡単には鑑賞できないであろう。しかし、この展覧会に展示されている作品ならば、誰でも鑑賞できる。

この展覧会開催中のタイムリーなニュースだ。

もしかしたら、この展覧会がきっかけとなって発表されたのかもしれない。

  2019年現在、《見立唐人行列》が2作品、日本に存在している。

歴史上、大変稀有な出来事だ。

今回発見の個人蔵のものと本展出品作品を同列に語るつもりはないが、2作品を日本で鑑賞できるのではないかと誤読されることのないよう注意いただだきたい。

作品群の希少性についての解説も前段の表現で十分ではないかと思われるかもしれないが、しつこく書いているのは、その珍しさを理解いただきたいがためだ。

北貞夫医師所蔵版とメアリー・エインズワース浮世絵コレクションを見比べてみたいものだ。

世界で1つしか存在しない作品やレア作品が展示されている大変貴重な展覧会。

ぜひ、お見逃しなく。

 

☆構成

1章 「浮世絵の黎明 墨摺絵からの展開」

2章 「色彩を求めて 紅摺絵から錦絵の時代へ」

3章 「錦絵の興隆 黄金期の華 清長から歌麿へ」

4章 「風景画時代の到来 北斎と国芳」

5章 「エインズワースの愛した広重」



2 葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》.JPG 

                              葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》

 

 

3 葛飾北斎《冨嶽三十六景 山下白雨》1950.712.jpg

                               葛飾北斎《冨嶽三十六景 山下白雨》

 

 

4 歌川広重《東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪》1950.806.jpg

                     歌川広重《東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪》

 

 

8 東洲斎写楽《二代目小佐川常世の一平姉おさん》1950.436.jpg

 東洲斎写楽《二代目小佐川常世の一平姉おさん》

 

■開催期間  201968日(土)~728日(日)【44日間】   

休館日/毎週月曜日(ただし月曜祝日の場合は開館、翌日休館)

 

☆問い合わせ 静岡市美術館(電話054・273・1515)

 

☆静岡市美術館 公式サイト

    http://www.shizubi.jp/

  

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