特別展 没後10 年 「上村松篁展」~鶴に挑む~ [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
特別展 没後10 年 「上村松篁展」~鶴に挑む~
「丹頂」 昭和55 年 松伯美術館蔵
平成13 年3 月11 日に惜しくも心不全のため逝去した日本画家・上村松篁。
松篁が亡くなってから10 年目を迎えることを記念し、80 年以上にわたって花鳥画家として活躍を続け、近代日本画壇に偉大な足跡を残した松篁芸術を改めてたどる回顧展が、松伯美術館で開催中である。
美人画家としてあまりにも有名な上村松園の長男として明治 35 年に、生まれた松篁は、小禽や金魚を観察することを好む少年で、物心ついた頃には自然に花鳥画家を志していたという。
大正4 年に京都市立美術工芸学校に入学し、大正10 年には京都市立絵画専門学校へと進学。
在学中に第3 回帝展に初入選するなど、早くから頭角を現わす。
絵画専門学校で出会った師入江波光に概念的な物の見方を指摘されリアリズムの洗礼を受けた松篁は、対象物とじっくり向き合い、その本質を捉えることを生涯の課題とし多種多様な表現を試みながら独自の画境を開拓すべく作画に励んだ。
穏やかに制作を重ねながら自らの進むべき道を追求し続けた松篁だが、昭和23 年には「創造美術」という在野の日本画団体を立ち上げ、美術界に一石を投じるなど、日本画の将来を真剣に考え熱い思いを持って尽力したという熱く行動的な一面もある。
以前、淳之氏に筆者がインタビューした際、松園のあまりにも有名な作品「序の舞」のモデルである女性は、松園が気に入り、後に息子の嫁としたという個人的なエピソードを語ってくれた。
当時のキャリアウーマンの先駆者である松園の長男である松篁は、松園の指示に従い素直に結婚したというから、おとなしい性格であろうと想像していたのだが、静かながら、強い意志を持った人柄が、この展覧会から見て取れる。
28 歳から母校で教壇に立ち、後進の育成にもあたるなど指導者としても京都画壇の先導を担った。
本展は、晩年に生み出された香り高い優品を中心に紹介する傍ら、20 代から幾度となく挑戦し続けた鶴の作品を一堂に集め、松篁芸術の本質を浮き彫りにする構成で、松篁の回顧展として極めて明快で心打つ展覧会である。
松園に続き文化勲章を受章した松篁の画業を改めて振り返り、格調高い花鳥画の数々を偲ぶことができる。
松篁の描く静謐な鶴を始め、万葉の美人画まで穏やかな松篁の世界を満喫できる文化芸術の秋にふさわしい展覧会であるといえよう。
図録も大変よく作られていて、淳之氏による松篁のエピソードなど人間、松篁を知る上で大変興味深い。
我が家は、祖父の代から上村家のファンである。祖父が生きていたら、この展覧会のことを熱く語るであろうと思う。
自分の祖父を思い起こさせるような松篁の絵には、温かさがある。
★主な展示作品
●上村松篁
「冠鶴」 昭和39 年 ホテル日航大阪蔵
「玄鶴」 昭和43 年 愛知県美術館蔵
「万葉の春」 昭和45 年 近畿日本鉄道株式会社蔵(松伯美術館管理)
「燦雨」 昭和47 年 松伯美術館蔵(展示は半期を予定)
「竹鶴」 昭和49 年 福岡市美術館蔵
「丹頂」 昭和55 年 松伯美術館蔵
「春輝」 昭和59 年 松伯美術館蔵(展示は半期を予定)
「薪能」 昭和61 年 京都府蔵(展示は半期を予定)
「芥子」 昭和62 年 松伯美術館蔵(展示は半期を予定)
「粟」 平成6 年 松伯美術館蔵(展示は半期を予定)
「春愁」 平成11 年 松伯美術館蔵
など現在本画約23 点と素描数点
*なお、併設展示として以下の作品も合わせて展示。
上村松園 「唐美人」 大正13 年 松伯美術館蔵
「娘」 大正15 年 松伯美術館蔵
「鼓の音」 昭和15 年 松伯美術館蔵
上村淳之 「白鷹」 平成19 年 個人蔵
「雪間」 平成21 年 個人蔵
など松園と淳之の前期・後期合わせて本画約 5 点
※出品作品については、都合により変更する場合があり。
.開催期間 平成23 年10 月4 日(火)~平成23 年11 月27 日(日)
主 催 松伯美術館 読売新聞社
協 力 ホテル日航大阪
休館 日 月曜日(10 月10 日(祝・月)は開館、翌11 日(火)休館)
開館時間 午前10 時~午後5 時(入館は午後4 時まで)
入館 料 大人(高校生・大学生を含む) 1000 円
小学生・中学生 500 円
*20 名以上は団体割引・身体障害者手帳のご提示によりご本人と同伴者1 名まで2 割引
松伯美術館
〒631-0004 奈良市登美ヶ丘2 丁目1 番4 号 電話 0742-41-6666
ホームページ
http://www.kintetsu.jp/shohaku/exhibition/spec2011_shoukou/index.html
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