ぼくらの家路 JACK [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
ぼくらの家路
JACK
ベルリン国際映画祭をはじめ、数々の映画祭で絶賛!
観客賞や審査員賞を受賞した珠玉の作品
第64回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、現代の育児問題を鋭く切り取った、
「ぼくらの家路( 原題JACK)」が全国一斉ロードショー公開されている。
大阪では、テアトル梅田で上映中だ。
母親と6歳になる弟マヌエル(ゲオルグ・アームズ)と、ベルリンで生活している10歳の少年ジャック(イヴォ・ピッツカー)。
だが、母親はジャックたちを愛しながらも、昼間、子供達と遊びに出ても、ジャックとマヌエルだけで先に帰らせたりと達との夜遊びの方が面白いようだ。
また、恋愛に夢中になって家を空けることが少なくない。
ジャックは、幼いマヌエルの世話をしながら、家事も坦々とこなす。
マヌエルに火傷を負わせてしまい、ジャックは施設に預けられることになる。
友達もできず、施設になじめないジャック。
夏休みには、ママに会える。その日を心待ちにしていたジャック。
その姿がいじらしい。
しかし、母から電話で「迎えに来られない」と言われ、感情を押し殺しながらも、裏切られた思いが、こみあげる。
ドイツの施設の係員はジャックを抱きしめる。日本なら、同じことが起きたら、抱きしめてくれるだろうか。
ジャックは、施設を飛び出し、ようやく家にたどり着く。しかし、母は不在。
いつものところに鍵もなく、母の携帯電話にかけても一向につながらない。
ジャックは、母に伝言を残し、母が預けていったであろう預け先までマヌエルを迎えに行く。
そして、兄弟ふたりで、母の仕事場や昔の恋人の事務所などベルリン中を探し回るのだ。
身勝手な母親に翻弄(ほんろう)される幼い兄弟を取り巻く過酷な環境。
さあ、兄弟はどうなるのか。
筆者は、日本だったら、どうだろうと考えながら、この映画を鑑賞した。
映画には、いろいろな伏線がちりばめられている。
例えば、オレンジジュース。自宅では、甘味料入りのジュース。しかし、施設では、100%の甘味料なしのジュースだ。母親の経済状態と無知を示しているだろう。
また、双眼鏡も大きな意味を持つ。
かつての母の恋人のところにも訪ねて行く。警察に引き渡されそうになるが、ジャックは強く拒絶する。
いくらジャックの意思とはいえ、かつての母の恋人が保護していても、彼が誘拐罪など犯罪者になってしまいかねない。
幼い子供が、アダルトチルドレンである母から育児放棄されている時、一般人はどう対処すればいいのか。何を子供達は望むのか。
この映画は、答えの難しい問題を投げかけられている。
筆者が、高校生のころ、近所に引っ越して来た京子姉さんは、21歳で双子の母親となった。夫もいたが、京子姉さんはまだまだ遊びたいさかりであった。筆者の母に「お米、貸して下さい。」と来たのが、始まりだ。
京子姉さんが出て行くときは、しょっちゅう生後4か月の双子の赤ちゃんを母や筆者が面倒をみるようになった。母が、親切にも双子で大変だから・・・と申し出たからだ。
筆者の父が帰って来る夜遅い時間になっても、京子姉さんは帰って来ない。
父は、ぎこちない手つきでガラガラで赤ちゃんをあやしていた。
筆者は、赤ん坊が可愛く、苦にならなかったし、それは、筆者の父母も一緒だ。おかげで筆者は、赤ちゃんの抱き方とおむつの替え方、ミルクの作り方を覚えた。
この映画を鑑賞していて、京子姉さんを思い出した。京子姉さんは、筆者にもよくしてくれたし、初めてコンピュータゲームをさせてくれたのも京子姉さんだ。
ジャック役は、イボ・ピッツカー。演じているとは思えないくらい自然な演技で、強くたくましく成長していくジャックそのものだ。
弟マヌエルはゲオルグ・アームズが演じている。ルーベンスの絵を彷彿とさせる可愛らしさは、抱きしめたくなる。
この映画を鑑賞した後は、この問題についてぜひ、語り合っていただきたい。
監督 エドワード・ベルガー
製作 ヤン・クルーガー
レネ・ローマート
脚本 エドワード・ベルガー
ネル・ミュラー=ストフェン
音楽 クルストフ・カイザー
キャスト イボ・ピッツカー ゲオルグ・アームズ ルイーズ・ヘイヤー ネル・ミュラー=ストフェン ビンセント・レデツキ
☆テアトル梅田ホームページ
http://www.ttcg.jp/theatre_umeda
☆オフィシャルサイト
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