日独交流150周年記念 ハンブルク浮世絵コレクション展 [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
日独交流150周年記念 ハンブルク浮世絵コレクション展
ハンブルク美術工芸博物館の浮世絵を初公開 初公開!ドイツから世界有数の浮世絵コレクションが里帰り!
春信、歌麿、写楽、北斎、広重などの人気絵師たちの作品に加え、稀少な「摺物」、画稿、板木などの珍しい資料も必見!!
日独交流150周年を記念し、ドイツ第二の都市ハンブルクから、世界的な浮世絵コレクションが里帰りしている。
日独交流150周年とは、プロイセンの東方アジア遠征団が1860年秋、江戸に到着し、翌61年1月24日に日本と修好・通商・航海条約を結び、その後の長年にわたる両国の友好関係の礎となっている。
その150周年の交流の歴史を共に祝う記念イベントが日本とドイツ各地で行われている。その文化記念行事として開催されているのがこのハンブルク浮世絵コレクション展なのだ。
1877年に開館したハンブルク美術工芸博物館は、ドイツでも有数の博物館として知られている。同館の収蔵品は約100万点を数え、ヨーロッパやアジアなど広範な地域や時代を網羅するコレクションの中には、数多くの保存状態のすぐれた浮世絵が存在する。
本展では、実に5,000点を超える同館所蔵の浮世絵コレクションの中から、そのほとんどが初公開となる約200点を選りすぐって展示していることが極めて珍しく、貴重な展覧会だ。
鈴木春信、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重といった人気絵師たちの作品が楽しめるのはもちろんのこと、中でも注目されるのは、個人的な贈答などのために贅をこらして制作された稀少な摺物の数々だ。
これは、商業ベースに乗せることがないため採算を度外視して制作された。よって絵師も力が入った出来栄えなため、大変美しく、流通量も少ないため、希少価値が高い。
そして、校合摺、版下絵、画稿、板木といった、浮世絵制作の様子を現代に伝える珍しい資料が展示され、単に浮世絵を観賞するだけではなく、歴史や制作過程を学ぶ上で学問的にも知的好奇心をくすぐる構成である。
このようにバラエティに富んだ作品が一堂に揃う機会は滅多となく、必見。本展覧会は、名品を楽しむだけでなく、浮世絵をもっと深く知ることのできる絶好の機会となるであろう。
恥ずかしながら、筆者は相国寺を訪れたことがなく、ハンブルクコレクションが里帰りするとのことで訪れたのだが、同志社大学近くの禅宗寺は、緑豊かで憩の場所だ。
しかも通常の美術館は土足で入る所が多いのだが、ここ相国寺承天閣美術館では靴を脱いで鑑賞できるので足が疲れず、リラックスできる。
天気のよい日には柔らかな陽の光が差し込み、会場内から見える庭園も美しいので、大変優雅な気分に浸れる。
オーディオガイドも大変わかりやすく解説しているので、おすすめだ。五感で浮世絵の世界を知り、日本文化を再考できるよい機会だ。
日本文化を評価し、コレクションし、そして状態よく保存していてくれたドイツに心から御礼を述べたい。
そんな気持ちにさせてくれるこの展覧会は、日独交流150周年記念行事にふさわしいといえる。
【展覧会のみどころ】
1. 世界有数の浮世絵コレクションが里帰り
ハンブルク美術工芸博物館のコレクションのうち日本美術は約1万点を数え、うち2000点が浮世絵作品。同館での浮世絵収集が開始されたのは開館当初からとされ、パリの美術商であるジークフリート・ビング(1838~1905、ハンブルク出身)や、林忠正(1853~1906)らの大きな関与があったと考えられている。
近年、故ゲルハルト・シャック氏(1929~2007)から遺贈された作品は版画約2600点で、そのうち掛幅40点、スケッチ類1600点、版本300点、摺物500点などに及び、質、量ともに素晴らしい。
この遺贈によりハンブルク美術工芸博物館の浮世絵作品は全体で5000点を超え、世界でも有数のコレクションとしてますます充実した内容を備えるようになったのだ。
2.優品にみる浮世絵の展開-師宣から北斎まで-
最初の浮世絵師ともいわれる菱川師宣の作品にはじまり、多色摺の版画である錦絵を草創した鈴木春信の「三十六歌仙 源宗于朝臣」、俗に浮世絵の黄金時代と称される天明・寛政期(1781~1801)に活躍した喜多川歌麿の「六玉川 高野の玉川」、東洲斎写楽の大首絵「松本米三郎のけはい坂の少将実はしのぶ」、今年生誕250周年で話題の葛飾北斎が描いた代表的シリーズ「冨嶽三十六景」、歌川広重の名作「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」など、本展では幅広い時代から数多くの名品が出展され、展覧会を通じて浮世絵の主要な歴史の流れが体感できる。
3. 美しい彫と摺の世界-稀少な摺物(すりもの)を多数出品
ハンブルク美術工芸博物館が誇る浮世絵コレクションの中でも、最も注目されるのは数多くの摺物であろう。
摺物とは、プライベートな目的で制作された浮世絵版画の一種。一般の浮世絵とは違い、少数注文により豪華な用紙や高い彫・摺の技術が結集されたもので、その精緻な美しさから世界中で評価が高い。
本展ではフランスの文豪エドモン・ド・ゴンクールが旧蔵していたことでも知られる23図からなる摺物帖をはじめ、葛飾派を中心としたすばらしい質と量を誇る同館所蔵 の摺物を多数展示。
4. 版本と肉筆画
コレクションに含まれる数多くの版本のうち、鈴木春信『絵本青楼美人合』や北尾重政・勝川春章合筆からなる『青楼美人合姿鏡』、喜多川歌麿による豪華な狂歌絵本など厳選された名品を展示。また、絵師の生の筆致を伝える肉筆の画軸では、北尾重政と狩野高信の名品『久米仙人と洗濯美人』、歌川広重の珍しい若描きの作品をはじめ、勝川春章、河鍋暁斎らが出展されるのでお見逃しなく!
5. 江戸の浮世絵制作を知る-画稿、版下絵、校合摺、板木
絵師のスケッチともいわれる「画稿(がこう)」、板木に彫る前に描かれた精密な下書き「版下絵(はんしたえ)」、色を摺る前に墨一色の板木を試し摺りした「校合摺(きょうごうずり)」、そして板木(はんぎ)など、本コレクションでは、浮世絵の制作途中で生み出される貴重な資料が数多く展示。
中でも北斎『冨嶽三十六景』の6点におよぶ校合摺は、他に例のない珍しいもの。
江戸の浮世絵制作の世界を知るとともに、当時の職人たちの高い技術を目の当たりにできる。
本展覧会監修者の永田生慈氏は、葛飾北斎研究の第一人者。
永田氏はこれまで国内外のコレクターや欧米諸国の美術館、博物館に埋もれた日本の浮世絵を発見し、鑑定。2006年にワシントン・スミソニアン博物館群のフリーア・ギャラリーで北斎展を開催した他、今年8月にはベルリンで北斎の大型展を開催。筆者はこのハンブルグ展を拝見し、あまりの質の高さに驚愕したため、この8月ベルリン マルティン・グロピウス・バウで開催された永田生慈氏監修の 「北斎回顧展」に参加して来て、帰国したばかりだ。
記者発表会、特別招待会、特別講演、一般公開と計4回、足を運びじっくり鑑賞して来た。
一般公開日には、我々以外日本人は見なかったくらいドイツ人の来場者でごったがえすくらい多くの人であふれており、ドイツ人の関心の深さを改めて感じた。
この模様は、後ほど報告するのでしばらくお待ち下さい。
日本にいながらにして、永田生慈氏監修の質の高いこのコレクションを見られるのは、貴重な体験だ。ぜひ多くの方に体験していただきたい。
名 称 日独交流150周年記念 ハンブルク浮世絵コレクション展
ハンブルク美術工芸博物館の浮世絵を初公開
150th Anniversary of Japan-German Treaty Masterpieces of Ukiyo-e Collection from
the MKG Hamburg
Japan’s first exhibition of ukiyo-e collection of the Museum für Kunst und
Gewerbe Hamburg
■会 期 前期:2011年5月21日(土)-7月18日(月)
後期:2011年7月23日(土)-9月11日(日)
■開館時間 午前10時~午後5時(最終入館は午後4時30分まで)
会期中無休
■会 場 相国寺承天閣美術館
〒602-0898 京都市上京区今出川通烏丸東入
■主 催 相国寺承天閣美術館、ハンブルク美術工芸博物館、日本経済新聞社
■後 援 大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館
■協 賛 岩谷産業、非破壊検査
■協 力 京都仏教会、毎日放送
■観 覧 料 一般 1,000円、65歳以上・大学生800円、小中高生500円
団体800円(20名以上・一般のみ)
※リピーター割引あり(会期中2回目以降ご鑑賞の方は、半券と引換にて100円割引)
■ハローダイヤル ℡.050-5542-8600(全日/8:00~22:00)
■ホームページ http://www.shokoku-ji.or.jp/jotenkaku/
読者プレゼント 10組20名様にご招待券
プレゼントあて先 : loewy@jg8.so-net.ne.jp に
展覧会名 ご住所、お名前をお書きの上どしどしご応募下さい。
発送をもって当選と代えさせていただきます。
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