シャルロット・ペリアンと日本 Charlotte Perriand et le Japon―Résonances [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
開館60周年
シャルロット・ペリアンと日本
Charlotte Perriand et le Japon―Resonances
シャルロット・ペリアン 《竹製シェーズ・ロング》
1941年/1985年再製作、Cassina??
20 世紀の建築とデザインに画期的な刺激をもたらしたシャルロット・ペリアン(1903-1999) は、巨匠ル・コルビュジエの椅子の製作者としてあまりにも有名だ。
ル・コルビュジエとその従兄ピエール・ジャンヌレとの共同作業を経て、建築とインテリアに数々の優れた作品を残したフランスの女性デザイナー、シャルロット・ペリアン。
1940 年の初来日以降、たびたび日本を訪れたペリアンは、日本を愛し、また多くの日本人に愛されて来た。
この展覧会では、戦前戦後を通じて日本のデザイン界に多大な影響を与えたシャルロット・ペリアンと日本の関係に注目しながら、彼女の仕事の全貌を明らかにしているのが意義深い。
シャルロット・ペリアンは、1927 年のサロン・ドートンヌに出品した「屋根裏のバー」
が認められ、ル・コルビュジエのアトリエに入所。そこでル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレとともに手掛けた鉄やアルミニウム、あるいはガラスといった新しい素材を用いた内装は、「住宅インテリア設備」として、住宅に新しい概念をもたらした。
シャルロット・ぺリアン、銚子にて
1954年 撮影:ジャック・マルタン
1940 年にペリアンは、かつてル・コルビュジエのアトリエで同僚だった坂倉準三や柳宗理の推薦によって、商工省の「輸出工芸指導顧問」として初来日。海外向けの工芸品の改良・指導を任されたペリアンは、柳宗理とともに日本全国をまわり、仙台の工芸指導所では若い研究員たちに、素材の扱いやデザイン手法など、ヨーロッパのモダン・デザインの実際を日本にもたらした。
日本滞在中に「民藝」運動の推進者である柳宗悦や河井寬次郎らと交友したペリアンは、「民藝」の理念に触れ、また地方に残る伝統的な意匠や素材、技術を同時代の感覚と結びつける試みを行なう。
1941 年の「ペリアン女史 日本創作品展覧会 2601 年住宅内部装備への示唆」( 通称「選擇、傳統、創造展」) で発表した《竹製シェーズ・ロング》はそのひとつである。
このほかにも、彼女が提案した竹や木を素材とした合理的かつ現代的なデザインは、当時の日本のデザイン界に強く影響を与えた。
それは戦後のデザインにも鮮明な流れとなって残り、今なお絶えず更新されながら脈々と続いている。
1953 年に再び日本を訪れたペリアンは、東京で「芸術の綜合への提案―コル
ビュジエ、レジェ、ペリアン3人展」(1955 年) を開催。
文楽から着想した椅子《オンブル(影)》をはじめ、違い棚をヒントにした書架《雲》など、戦前の自身の日本体験をデザインに生かした数々の名作を生み出し、高い評価を得ている。
彼女が日本文化からデザインのインスピレーションを得ていたことも興味深い。
Perriand Ombre 1954年
シャルロット・ぺリアン「選擇、傳統、創造展」 東京高島屋会場? 1941年
撮影:フランシス・ハール
5 つの章で構成される本展では、家具、インテリアに関する図面、写真資料
のほか、シャルロット・ペリアンが撮影した写真、交友のあった日本の人々とのあ
いだの書簡など約500 点を展示。
ペリアンと日本人との間の感性の共鳴とその波及をたどりつつ、21 世紀の建築やデザインを考える大変良い機会であろう。
開館時間:午前9 時30 分―午後5 時(入館は午後4 時30 分まで)
休館日:月曜日(1 月9 日は開館)、
12 月29 日(木)―1 月3 日(火)
観覧料:一般 900 円(800 円)、20 歳未満・学生 750 円(650 円)、
65 歳以上 450 円、高校生 100 円
※( )内は20 名以上の団体料金です 。
※中学生以下、障害者手帳をお持ちの方は無料です。
※ファミリー・コミュニケーションの日:
毎月第1 日曜日(今回は11 月6 日、12 月4 日)は、18 歳未満の
お子様連れのご家族は、優待料金(65 歳以上の方を除く)で観覧可。
第一章 日本との出会い 1929-1940
1903 年にパリで生まれたシャルロット・ペリアンは、1927 年にサロン・ドートンヌに出品した『屋根裏のバー』が認められ、ル・コルビュジエのアトリエに入所。
ル・コルビュジエとその従兄のピエール・ジャンヌレとの共同作業によって優れた作品を生み出す。
また、ル・コルビュジエに師事して渡仏した日本の建築家、前川國男、坂倉準三とも出会う。1940 年、日本の商工省から「輸出工藝指導顧問」として招聘された彼女は、坂倉からもらった岡倉覚三[天心] 著『茶の本』を手に白山丸に乗船し日本へ出発。
それはナチスドイツによるパリ陥落の翌日であった。
この章では、ル・コルビュジエのアトリエでの前川、坂倉との出会いから来日までの経緯を紹介。
第二章 日本発見 1940-1946
この章では竹製のシェーズ・ロング(長椅子)を軸に、日本で伝統的に用いられてきた素材、竹との出会いに着目しながら、「選擇・傳統・創造展」の一部を再現的に展示。
また民藝運動の中心人物であった柳宗悦や河井寬次郎など日本の美術界との交流、日本の民俗学研究との関係、仙台の工芸指導所や山形の雪害試験所での活動なども視野に入れ、ペリアンの行動をいくつかの視点から見ていく。
シャルロット・ぺリアン「選擇、傳統、創造展」 東京高島屋会場 1941年
撮影:フランシス・ハール
第三章 戦後―日本との再会 1949-1960
この章では椅子「オンブル」を戦後期の日本での活動の象徴とし、日本の伝統的な要素を採り入れつつ清新な感覚でデザインしたペリアンの組立式の「書棚」やル・コルビュジエのタピスリーなどを展示。
東京で開催された「国際デザイン会議」への参加、エールフランスの東京と大阪の支社の内装、丹下健三が設計した旧東京都庁舎の内装、パリの日本大使公邸の内装などを紹介。
神奈川県立近代美術館を設計したかつての同僚坂倉準三や、建築家丹下健三、画家岡本太郎らとの交流に触れながら、ペリアンの活動の日本での更なる展開を探っている。
第四章 フランス―暮らしの中の日本 1959-1999
日本から帰ったペリアンは、フランスでの生活の随所に日本で得た知識や経験をとりいれ、それらを作品に展開。
特に1957年の「サロン・デ・ザール・メナジェ」では、建築家進来廉設計の「日本家屋」に柳宗理のバタフライスツールやイサム・ノグチのあかりとともに、自らの作品をアレンジした「ラ・メゾン・ジャポネーズ」を手掛ける。
1993年には、パリのユネスコ庭園内に茶室を作るなど、フランスを中心に海外に向けて日本文化を発信。
この章ではペリアンが発信した日本を紹介、検証している。
ユネスコ庭園内のシャルロット・ペリアンの「茶室」 パリ、1993年
撮影:ペルネット・ペリアン=バルサック、ジャック・バルサック
第五章 生活と芸術―ペリアンからのメッセージ
1998年10月、ペリアンの生前最後の展覧会が東京のリビングデザインセンターOZONEで開催さた。
この時ペリアンは自身の仕事と生涯を振り返り、娘のペルネット・ペリアン=バルザック氏とともに展覧会の会場構成など積極的に参加。
この章では彼女が唱えた「生きる芸術」をキーワードに、彼女が日本や世界に
向けて発信したかったこと、ペリアンの中で西洋と日本がどう結びついていったか、彼女のモダニズム的な感覚のうちで伝統がどう解釈されていったかをさらに広く考察。__
シャルロット・ペリアン(1903?1999) 略歴
1903 年 パリに生まれる。
1927 年 ル・コルビュジエのアトリエに入所(1937 年まで)。
1940 年 商工省の招聘を受け、輸出工芸指導顧問として来日。
1941 年 東京と大阪の髙島屋にて「ペリアン女史 日本創作品展覧会 2601 年住宅内部装備への示唆」 (通称「選擇、傳統、創造展」) 開催。
1946 年 仏領インドシナを経由して、フランスに帰国。
1955 年 東京、髙島屋にて「芸術の綜合への提案―コルビュジエ、レジェ、ペリアン3 人展」開催。
1985 年 パリの装飾美術館にて「シャルロット・ペリアン、生きる芸術」展開催。
1996 年 ロンドンのデザインミュージアムにて「シャルロット・ペリアン、モダニスト・パイオニア展」開催。
1999 年 パリにて逝去。
パリ、ユネスコ庭園内のシャルロット・ペリアンの「茶室」 1993 年
撮影: ペルネット・ペリアン= バルザック、ジャック・バルザック
2011年10月22日(土)-2012年1月9日(月・祝)
神奈川県立近代美術館 鎌倉
〒248-0005 神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-53 (鶴岡八幡宮境内)
Tel. 0467-22-5000 Fax. 0467-23-2464
主催:神奈川県立近代美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会
協賛:ライオン、清水建設、大日本印刷、損保ジャパン、日本テレビ放送網
後援:フランス大使館、日仏工業技術会、日仏美術学会、日本建築学会、
日本建築家協会、日本インテリア学会
特別協力:Archives Charlotte Perriand, Paris
協力:エールフランス航空
All Rights Reserved, Copyright Archives Charlotte Perriand ? ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2011
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