五浦六角堂再建記念 五浦と岡倉天心の遺産展 [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
五浦六角堂再建記念
五浦と岡倉天心の遺産展
横山大観から、下村観山、菱田春草など、
日本近代絵画史上に残る作家を一堂に。
岡倉天心
アメリカで最も古い美術館の一つに数えられるボストン美術館。
奇しくも東京国立博物館で「特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝」が開催中である。
http://www.boston-nippon.jp/boston/
岡倉天心は、明治37年(1904)にはこのボストン美術館に迎えられ、後に中国・日本美術部長として「アジアはひとつ」のスローガンのもと、東洋の美術品の体系的な収集に力を注いだことで有名。
東日本大震災は、北関東地方にも大きな被害をもたらした。
なかでも、岡倉天心が建設し、活動の拠点としていた、北茨城市五浦の六角堂の滅失は、人々に大きな衝撃を与えた。
天心が創設した日本美術院の第一部(絵画)が明治39年に五浦に移されると、横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山らは、この地に移り住み制作活動に没頭。
日本近代絵画史上に残る傑作を生み出している。
現在、地元では、茨城大学を中心に、六角堂再建の取り組みがなされ、平成24年4月17日に竣工式を迎え、28日から一般公開されている。
五浦にとって歴史上重要な建物であり、その再建が震災からの復興のシンボルとなる六角堂、そして岡倉天心の足跡をたどることで、震災からの復興と文化財保護をアピールする展覧会が、日本橋髙島屋で始まった。
第1章 岡倉天心の生涯
第2章 岡倉天心の理想を継いで
第3章 甦る五浦の六角堂
の3部構成
第1章 では、岡倉天心の文部省辞令や書簡、ボストン時代の岡倉天心の愛用品、
ボストン美術館のキュレーター承認通知書、天心直筆の英文筆記体による「安宅」や「小敦盛」など、珍しい品々が並ぶ。
達筆でわかりやすい英文筆致には、彼の実直な性格が表れている。
特に筆者の目を引いたのが、イザベラ・スチュワート・ガードナーから五浦の天心に宛てた国際郵便で送られた手紙である。
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の創設者であるイザベラと天心の私的な交流があった、貴重な資料といえよう。
筆者がボストンに約一ヶ月滞在していた時、何度もこの美術館を訪れたことがある。
ギャラリーは15世紀ヴェネツィアの大邸宅を模してデザインされており、庭園が美しく
のんびりできる。
この美術館は、ヨハネス・フェルメールの『合奏』を購入したのを始めとし、(後日盗難)ティツィアーノの『エウロペの略奪』など名作揃いである。
ジョン・シンガー・サージェントが描いたイザベラの肖像画が有名である。ちなみに
ロンドンのセント・ポール大聖堂地下に彼の墓がある。セント・ポール大聖堂は、1981年にチャールズ王太子とダイアナ元妃の結婚式が行われた場所である。
西洋美術に造詣が深いイザベラが、日本美術のスペシャリスト、天心と交流を持っていたことは極めて興味深い。
ただし、イザベラは天心から美術品を購入はしなかったという。
この展覧会は、岡倉天心の名前を知っていても、詳細は知らないという人にもわかりやすく展示されており、見ごたえ充分。
木村武山が描いた「彩色杉戸絵」は、茨城出身の実業家、内田信也邸のために描かれた襖絵である。
松原の裏に富士山を配したダイナミックな絵は、その規模と共にインパクトを与える。
日本の伝統的な富士図を踏襲しながらも、部屋の空間を大胆に活かしている。
内田邸は、阪神淡路大震災で被災した。が、この「彩色杉戸絵」は生き残った。その後、茨城県の美術館に預けられていたが、昨年、東日本大震災に遭う。
しかし、この二つの未曾有の震災に遭遇しながら、この「彩色杉戸絵」は、奇跡的に乗り越え、この展覧会を飾っている。
来年、映画「天心」が完成する予定であるとのこと。こちらも期待が持てる。
また、図録もしっかり作りこまれており、弟子の横山大観から、下村観山、菱田春草などの作品が、収められている。詳しく解説が書かれているので、まだ知らぬ天心に会えるようだ。
東京国立博物館の「特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝」を訪れる前に鑑賞することをお勧めする。
期間: 2012年5月9日(水)→ 28日(月)
場所:日本橋髙島屋8階ホール
■開場時間:午前10時~午後8時
※最終日は午後5時閉場
(ご入場は閉場30分前まで)。
■入場料:一般800円(600円) /
大学・高校生600円(400円) / 中学生以下無料
■主催:「五浦と岡倉天心の遺産展」実行委員会(茨城大学、NHKサービスセンター)、
日本経済新聞社
■後援:公益財団法人 日本美術院
※( )内は団体10名様以上の割引料金。
※当催については、「障害者手帳」をご提示いただいたご本人様、ならびに、ご同伴者1名様まで入場無料。
☆読者プレゼント
10組20名様にご招待券 プレゼント
あて先 : loewy@jg8.so-net.ne.jp に
件名:展覧会名と会場名
本文:ご住所、お名前
をお書きの上どしどしご応募下さい。
発送をもって当選と代えさせていただきます。
コメント 0