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杉本博司 ハダカから被服へ  Hiroshi Sugimoto: From naked to clothed [美術館  ARTNEWS アートニューズ]

杉本博司 ハダカから被服へ

Hiroshi Sugimoto: From naked to clothed

「人類の衣服の歴史は人類の歴史そのものと同じほど古い」(杉本博司)

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撮影:木奥惠三 または Photo by Keizo Kioku

[コピーライト]Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

人類の始まりから20 世紀まで、人間と衣服の関係を杉本博司がカメラの眼を通して探る展覧会が、原美術館で開催されている。

この展覧会は、2005年「時間の終わり」(森美術館)2008年「歴史の歴史」(金沢21世紀美術館)2011年「アートの起源」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)と続いてきた杉本博司展の延長線上に展開するもの。

写真作品は、ガブリエル シャネル、イヴ サンローラン、川久保玲、三宅一生など、20 世紀を代表するファッションを彫刻的にとらえた「スタイアライズド スカルプチャー」シリーズを中心に、「ジオラマ」や「肖像写真」も織り交ぜている。

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「スタイアライズド スカルプチャー 012 [三宅一生1994]」 2007

ゼラチンシルバープリント 149.2 x 119.4 cm 衣装所蔵:公益財団法人京都服飾文化研究財団

[コピーライト]Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

さらに自ら演出やデザインを手がけた文楽の人形や能楽の装束ほかも展示し、杉本独自の視点で「装う」ことの意味を問う内容だ。

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「雷紋(いかずちもん) 能衣裳」 2011年 染絹 170 x 203 cm

公益財団法人小田原文化財団蔵

 杉本博司は、写真というメディアの本質を探究し、人間と世界の意味を照射する数々の写真作品で国際的に高い評価を受けている。

日本語では「Photography」を「写真」と表記しているものの、デジタルメディア時代の今、写真画像の加工や修正はコンピュータ上で簡単にできるようになった。

しかし、杉本博司はデジタル時代以前に写真は虚構である事を見抜き、カメラの眼で世界をとらえる事によって、人間の眼の性(さが)を研究して来た。

その精緻なモノクロームのプリントは透徹した思考と卓越した技術に裏打ちされ、他の追随を許さないイメージが鑑賞者を魅了する。

この展覧会は、ガブリエルシャネル、イヴ サンローラン、川久保玲など、20 世紀を代表するデザイナーによるファッションの数々を撮影した「スタイアライズドスカルプチャー」シリーズを中心に構成されている。

「人類の衣服の歴史は人類の歴史そのものと同じほど古い」ことに着目し、「人体とそれを包む人工皮膚を近代彫刻として見る」という視点から制作したこのシリーズは、生身の身体を持ったモデルではなく、慎重に選んだマネキンを使って撮影されている。これは、人間にとっての衣服の意味、人間と衣服の関係を掘り下げる示唆的なシリーズとなる。

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「負の定曲率曲線 双曲型の回転面」 2012

本体:アルミニウム / 台座:鉄 本体:高さ 210 cm / 台座: 直径 40 cm

[コピーライト]Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

このシリーズに加えて、他のシリーズ(「ジオラマ」および「肖像写真」)から選んだ写真作品が「ハダカから被服へ」という人類史的な軸を浮き上がらせる。

さらに、杉本博司自身が脚本・美術・演出を手がけた文楽の人形、デザインを手がけた能楽の装束、これまで収集した美術工芸品も織り込み、人間の身体と「装う」ことの意味を、杉本博司ならではの視点で読み解く。

【主な展示内容】

■写真作品 すべてゼラチンシルバープリント(銀塩写真、モノクローム)

「スタイアライズドスカルプチャー」(Stylized Sculpture 15

本展の中心であり、まさに衣服(と身体)を主題にしたシリーズ。マドレーヌ ヴィオネ、ガブリエル シャネル、クリスト バルバレンシアガ、イヴ サンローラン、ジョン ガリアーノ、三宅一生、山本耀司、川久保玲など、20 世紀を代表するデザイナーによるファッション(公益財団法人京都服飾文化研究財団所蔵)を撮影したもの。

「人体とそれを包む人工皮膚を近代彫刻として見る」という視点がシリーズタイトルに込められている。

古いものでは1920年代のデザインもあり、人の体型も時代によって異なるため、生身のモデルではなく、慎重に選んだマネキンを使って撮影された。

それによってデザインされた衣服の本来の美しさを引き出そうとしている。

☆「ジオラマ」(Dioramas)および「肖像写真」(Portraits)から 11 点 展示。 

 「ジオラマ」はニューヨーク自然史博物館の、「肖像写真」はマダムタッソー蝋人形館の展示を撮影したもの。

前者では古代の環境や生物が、後者では歴史上の偉人や現代の著名人が精緻に再現されている。

カメラの眼を通すことによって、偽物でありながら時間を超越した永遠の存在にも感じられるイメージは、杉本博司の写真作品の特色を端的に表している。

「ジオラマ」は杉本博司が注目されるきっかけとなった初期のシリーズでもある。

■その他

文楽人形/杉本博司が演出した「杉本文楽曾根崎心中付り観音廻り」(2011 年)のために制作したものや、

能楽の装束/杉本博司が美術を手がけた「神秘域(かみひそみいき)」(2011 年)で野村萬斎が着用したものなど、

杉本博司収集の美術工芸品を展示。

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「杉本文楽曾根崎心中」の為の人形と衣裳 2011

木、染絹、その他 高さ 72 cm

公益財団法人小田原文化財団蔵

【展覧会に寄せて/作家の言葉】

ハダカから被服へ

なぜ私達人間は服を着るのだろう。私達は装い装う。私は私以外の何者かになりたい。いや、私であるためには、私は私を装わなくてはならない。現代文明のただ中では、裸は許されない。私は裸の自分を羞じる。

私は着せ替え人形だ。毎日服を着て、私は私を演出する。私が裸でいられる短い時間、それは入浴の時と、子孫繁栄の時。私が子孫繁栄の時へと導かれるためには、夥しい擬態と演出が必要だ。私が私を裸の恍惚へと導くためには、夥しい数の服が必要とされる。

その短い子孫繁栄の時が過ぎ去っても、私は私の装いを続けなければならない。

他人はあなたの装いを見て、あなたを認知する。それがあるにしろ、ないにしろ、私は私の知性を装い、私の資産を装い、私の嗜好を装う。

装いは服だけではない。私の表情、私の仕草、私の眼の翳り、それらは自動的にあなたの着るものと連動している。

あなたの意志とは係わりなく、あなたの着る服が、あなたの表情を決める。あなたは、あなたの服の気持ちになる。

顔というあなたの仮面は、あなたの服に最もふさわしい仮面を選ぶ。

大昔、私達が裸で暮らしていた頃、私達は幸せだった。

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「アートのほうき かえりな垣」 2012

250 x 500 x 45 cm

[コピーライト]Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

杉本博司

【作家略歴】

杉本博司 すぎもと ひろし

東京、下町に生まれる。立教大学経済学部卒業後渡米、ロサンジェルスのアートセンターカレッジ オブ デザイン卒業後、74年よりニューヨーク在住。

現代美術作家として、世界各地の美術館で個展を開催する。

2009 年建築設計事務所「新素材研究所」を東京に開設、静岡県長泉町に IZU PHOTO MUSEUM を設計する。

2009 年、小田原文化財団を設立、財団の活動として「杉本文楽曾根崎心中付り観音廻り」を神奈川芸術劇場にて公演する。

1988 年、毎日芸術賞

2000 年、パーソンズスクールオブ デザイン ニューヨーク、名誉博士号

2009 年、高松宮殿下記念世界文化賞

2010 年、紫綬褒章

主な著書に『歴史の歴史』(新素材研究所)、『空間感』(マガジンハウス)、

『苔のむすまで』『現うつつな像』『アートの起源』(新潮社)がある。

http://www.sugimotohiroshi.com

【主な作品】

杉本博司が脚光を浴びたのは1970 年代後半に着手した「ジオラマ」と「劇場」のシリーズによってである。

長時間露光によってスクリーンを満たす映画一本分の光をとらえた「劇場」シリーズは、人間にとっての「見る」ことの本質を可視化した。

「原始人の見ていた風景を、現代人も同じように見ることは可能か」という問いに発し、世界中の海と空を同じ構図で撮り続けた「海景」シリーズは1980 年に始まり、この3 シリーズによって杉本博司は国際的な評価を確立した。

その後も、レンズの焦点をあえて外した撮影でモダニズム建築のフォルムのエッセンスを抽出した「建築」、カメラを通さず直接光をフィルムに焼き付け、プリントした「放電場」など、精力的に多彩な写真作品を制作している。

また、2000 年代に入って建築の設計や文楽・能などの舞台活動にも活躍の場を広げており、その一端はこの展覧会の内容にもうかがえる。

【杉本博司と原美術館/ハラ ミュージアム アーク】

本展は原美術館で初めての杉本博司展であるが、原美術館の別館ハラミュージアム アーク(群馬県渋川市に1988 年開館、磯崎新設計)では、1996 年に個展を開催している。

これはニューヨークのメトロポリタン美術館で開催した個展をハラミュージアムアークの空間に合わせて再構成したもので、48 点からなる長大なシリーズ「千体仏(後に「仏の海」)」の日本での初公開となった。

京都・三十三間堂に並ぶ千体千手観音像を主題に、観念(信仰)の具現化としての仏像をカメラの眼で切り取ったこのシリーズは、原美術館のコレクションに加わった。

原美術館では、そのほかに「海景」シリーズも7 点を所蔵している。

なお、この展覧会図録は、図録代わりの「洒落本」の形態を取っている。

いわゆる展覧会図録ではなく作家が執筆した文章と図版によるものでかなりユニーク。江戸時代に流行した戯作の一種で ある洒落本(しゃれぼん)の形式を模して、和綴じ製本されており、個性的。

「洒落本 秘すれば花」には、杉本博司がこう書いている。

「動物的な発情期を失った人間は、発情を隠すことによって、より発情するようになる。羞恥と隠蔽のはざまで、人の心が育まれていった。いちじくの葉は腰蓑へ、そして衣服へと発展していく。」

この芸術家の感性を感じられる洒落本は、手元に置いておきたい一冊だ。

会期  2012 3 31 [] - 7 1 []

会場 原美術館 東京都品川区北品川4-7-25 140-0001

Tel 03-3445-0651(代表) Fax 03-3473-0104(代表)

ウェブサイト http://www.haramuseum.or.jp

主催・会場 原美術館

特別協賛 Dom Perignon

協力公益財団法人京都服飾文化研究財団、公益財団法人小田原文化財団、ギャラリー小柳

出品作品数 「スタイアライズドスカルプチャー」シリーズ15 点を中心に約30 点を予定

開館時間 11:00 am-5:00 pm(水曜は8:00 pmまで/入館は閉館時刻の30分前まで)

休館日 月曜日(祝日にあたる4 30 日は開館)、5 1

入館料 一般1,000円、大高生700円、小中生500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は

小中高生の入館無料/20名以上の団体は1100円引

☆読者プレゼント 

   1020名様にご招待券 プレゼント

   あて先 :  loewy@jg8.so-net.ne.jp

   件名:展覧会名と会場名

   本文:ご住所、お名前

   をお書きの上どしどしご応募下さい。

   発送をもって当選と代えさせていただきます。


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