絹谷幸二 天空美術館 Koji Kinutani Tenku Art Museum 特別展示「夢見る力~空想大劇場」 [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
絹谷幸二 天空美術館
Koji Kinutani Tenku Art Museum
特別展示「夢見る力~空想大劇場」
Koji Kinutani Tenku Art Museum
祝 飛龍遊々スカイビル(立体) : 2018年/スティロフォーム ミクストメディア /H2450×W1900×D1300
絹谷幸二 天空美術館は、眺望抜群の梅田スカイビル27階に位置し、美の力、芸術力によって、人類を元気にする新たなる芸術文化発信の拠点を目指す最新型ミュージアムだ。
絹谷幸二について、筆者は以下などで記しているので参照されたし。
https://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-11-12
絹谷幸二は、アフレスコという壁画技法の国内第一人者だ。
アフレスコ技法とは、フレスコ画を創造する技法の名前で、絹谷本人は必ずアフレスコと〝ア〟をつける。
日本では、フレスコという方になじみがあるが、フレスコとは、英語: fresco、イタリア語: Affrescoという。
アフレスコは絵画技法のひとつで、この技法で描かれた壁画をフレスコまたはフレスコ画と呼ぶのだ。
語源はイタリア語の "fresco" で「新しい」「新鮮な」という意味である。
この呼び方は、制作過程に所以がある。
まず壁に漆喰を塗り、その漆喰がまだ「フレスコ(新鮮)」である状態で、つまり生乾きの間に水または石灰水で溶いた顔料で描く。
その方法は、まず、漆喰には石灰岩(CaCO3)を焼成し、生石灰(CaO)にした上に加水した消石灰(Ca(OH)2)を使用する。
作品を描写中、媒剤となる水分はたえず気化し、消石灰は二酸化炭素(CO2)を吸収、酸素(H2O)を放出し、炭酸カルシウム(CaCO3)に変化する。
この炭酸カルシウムは水に溶けない。
そのため、アフレスコ技法は、その過程の困難さゆえにであろうか、アフレスコ画は保存性に大変優れているというメリットが大きいのだ。
アフレスコ画は、ルネサンス期に盛んに描かれた。
ラファエロの『アテネの学堂』やミケランジェロの『最後の審判』、ジョットによる「聖人フランチェスコの生涯(サン・フランチェスコ聖堂 イタリア・アッシジ)などがよく知られている。
このような大天才でなければ、なかなか挑めない画法である。
アフレスコ画は、全くやり直しが効かないため、高度な計画と技術力を必要とする、大変難易度が高い画法である。
失敗した場合は漆喰をかき落とし、最初からやり直すほかはないのだ。
そのため、多くの画家がこのやり方を採用したがらない。
画家としては、やり直しは効くが保存性に欠ける油絵を選ぶか、全くやり直しが効かないが保存性の高いアフレスコ画を選ぶかは悩ましい問題でジレンマを抱えることになるであろう。
絹谷幸二 天空美術館では、世界初の試みである絵の中に飛び込む大迫力の3D映像体験や、アフレスコ(壁画の古典技法)とミクストメディア(混合技法)による絵画・彫刻の数々を鑑賞できるほか、遊び心満載のワークショップやアトリエスペース、そして快適空間のカフェなど世界中の人々を魅了している。
また、美術館の外に目をやると夕日が大変美しいのも見逃せない。眼下に淀川が流れる大阪の街並みが一望のもと。
この美術館では、開館2周年記念の特別展示「夢見る力~空想大劇場」が開催中。
☆3D映像
高さ約3m、幅約14mの大型ラウンドスクリーンで、大迫力の3D映像を体験!
音楽とともに絵画の世界に入り込む、まるでテーマパークのアトラクションのよう。
◯夢無辺 : 2016年/3D映像/上映時間5分
金雲たなびく蒼天に輝く旭日と大坂城。やがて城郭は満開の花びらとともに拡散していき、四季に彩られた富士の景観へと見る者を誘う。
そこに突如、雲海から龍が出現。
飛翔する龍の口へ吸い込まれた後は、風神雷神が乱舞する勇壮なイメージ世界へ。
「不二法門」や「般若心経」の言葉が飛び交い、天使や女神などが浮遊し、生命の誕生と人間愛を象徴する宇宙空間へと続く。
そしていつの間にか大坂城へ。
夢無辺とはどこまでも広がっていく夢の情景のこと。
迫力ある音響とともに百花繚乱の大劇場だ。
◯平治の乱 : 2018年/3D映像/上映時間5分
開館2周年を記念して制作された最新3D映像(ZERO-TEN制作)。
平安時代末期の平治元年(1159)、京都に起こった内乱をテーマに、人類への警鐘と救済への祈りを込めた作品。
炎に包まれる洛中の情景と、次々と浮かび上がる衝撃的な場面は、歴史的に繰り返されてきた戦禍や、権力抗争にあけくれる人間の愚かさを暗示し、紅蓮の炎の中に浮かび上がり憤怒する仏の姿は、時空を越えて今日的な教訓を提示している。
「夢無辺」に続いて絹谷幸二 天空美術館が贈る、最新技術を駆使した壮大な絹谷ワールド。
「動・静」渦巻く華麗なる夢の大劇場だ。
☆絵画展示
◯アラベスク : 1985年/アフレスコ・ストラッポ/80号(1120×1455)20連作
1985年10月、東京・青山の国立総合児童センター「こどもの城」劇場入口に制作されたアフレスコ20面の傑作。
2015年2月、センターの閉館にともない作品保存のため全面がストラッポされた。
ストラッポとは壁画の表面を剥がし取ることで、この高度な技術によって作品の収蔵と移動が可能となり、絹谷幸二 天空美術館での鑑賞が実現。
描かれているのは古今東西の時空を越えた夢物語。
異国情緒たっぷりのモチーフが目を楽しませてくれる。
アラベスクとはアラビア風の幾何学的な装飾文様を指す。
この作品の幾何学文様は劇場内の空間をイメージさせ、鑑賞者を様々な情景へと誘う。
見る人の感性で百人百通りの物語が浮かび、まるで自分が物語の主人公のように思えてくるようだ。
世界中の子どもたちへ夢見る力、空想の楽しみを教えてくれる連作だ。
=========================================◯祝・飛龍不二法門 : 2013年/ミクストメディア 金箔 プラチナ箔/200号(1940×2590)
絹谷幸二 天空美術館のシンボルゾーンを飾る作品。
白銀をたたえそそり立つ富士に、雲海から如意宝珠を手にした龍が童子を背に浮かび上がる。
神通力を象徴する神獣・霊獣として描かれる龍の口からは「不二法門(ふにほうもん)」という言葉が。
不二法門とは善と悪、生と死、我と無我など相反する二つの概念は一つのものの部分である、ということを教える仏語。
まさに芸術とは、人間の善悪、美醜、強弱、長所短所など全てを包み込む自然の豊饒そのものでなければならないという絹谷幸二の信念を象徴する言葉である。
芸術への理想、そして自然や生命へのオマージュ(称賛)を高らかに謳い上げ、鑑賞者を豊饒なる絹谷ワールドへ誘う。
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◯双穹の翼 パリ飛翔 : 2007年/ミクストメディア/100号(1303×1621)
絵を描くことによって人々に夢や希望を届けてきた絹谷幸二にとって、鍛え抜かれた肉体と技で夢の世界を演出するサーカスへの強い興味・関心が芽生えたのは、当然のことだったと推測できる。
エッフェル塔が見渡せるトロカデロ広場を舞台に、輝ける陽光と大輪の虹に包まれた中で演じられる空中ブランコの情景を描き、人間の表現への無限の可能性を高らかに謳い上げた作品である。
サーカスを絹谷幸二がいかにリスペクトしているかよくわかる作品だ。
その芸術性について筆者は以下などに記しているので参照されたし。
☆木下大サーカス名古屋公演 KINOSHITA CIRCUS
https://artnews.blog.so-net.ne.jp/2019-05-28
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◯日月天馬飛翔 : 2005年/ミクストメディア/120号(1303×1939)
ギリシア・ローマ時代の古代彫刻は「高貴なる単純と静謐なる偉大」と称され、西洋美術の根幹を成してきた。
彫刻とともに紺碧の空にリズミカルに浮かび上がる可憐な花は、悠久の時の流れを象徴する。
時空を超えた美へのオマージュが込められた作品である。
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◯大阪城満開日乃出 : 2016年/ミクストメディア 金箔 プラチナ箔/50号(910×1167)
絹谷幸二 天空美術館の開館を記念して大阪をテーマに描かれた作品。
昨今の戦国武将や刀剣のブームで人気の大阪城が、満開の桜と旭日の輝きの中に浮かび上がる。
絹谷幸二 天空美術館が大阪城とともに新しい大阪のシンボルとして世界中の人々に愛されるようにと、一筆一筆に願いを込めて描かれたもの。
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◯黄金旭日名古屋城 : 2016年/ミクストメディア 金箔/240×665
2018年新生した名古屋・御園座の緞帳用に描かれた原画。
積水ハウスが発注し27年ぶりに新たに織られた緞帳は、高さ10メートル、幅24メートル、重量は1tを超える巨大なもの。
黄金の日輪を背景に金のシャチホコを左右に配し、荘厳な名古屋城が描かれている。
天空に広がる虹には十二支が並ぶ。
縁起物としての十二支は、土産の置物のような愛らしく親しみやすい姿で描かれ、御園座が守り続けてきた「時間」と「美」を象徴している。
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◯黄金背景富嶽旭日・風神・雷神 : 2015年/ミクストメディア 金箔/150号(1818×2273)2枚組
江戸時代の絵画を代表する琳派の祖、俵屋宗達の風神雷神へのオマージュが創意の源泉にある。
旭日に浮かび上がる富士を挟み対峙する勇壮な二神像。
豪快無比な表現力で描かれた風神・雷神の目には、自然を破壊する人間の傲慢さへの怒りが溢れる。
風神は風車を回し、雷神は雷や地熱をとらえ、自然界の大いなる代替エネルギーを取り込む事を描ききって現代文明への警鐘を込める。
人類の元気の源を目指す天空美術館が誇る大作である。
風神
雷神
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◯ 祝 飛龍遊々スカイビル(絵画) : 2018年/ミクストメディア/150号(1818×2273)
光彩輝く梅田スカイビルを背景に、淀川より飛翔した龍神がスカイビル25周年を祝福し、祝いの玉取り龍となって舞う。
龍は水に対する敬意の念から生まれた水の神であり夢や空想上の生き物。
一方、今ここに在るスカイビルは世界的に名高い現実の建築物である。
この龍とビルがおりなす迫力の躍動感は、「空想」と「現実」は相反する別々の概念ではなく、一つのものの部分であると説く、絹谷の作品テーマである維摩経の教え「不二法門」に通じている。
夢や空想、豊かな想像力が明日の科学や未来をつくる。
両者を同時にとらえる大切さを私達に指し示してくれるのである。
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