マン・レイの世界 〜創造的実験〜 [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
マン・レイの世界 〜創造的実験〜
「マン・レイの世界展」が、東京富士美術館で開催中である。
——「わたしは、事実、もう一人のレオナルド・ダ・ヴィンチであった。*」
*千葉成夫訳「マン・レイ自伝——セルフポートレイト」(美術公論社)より
マン・レイ(Man Ray, 1890年8月27日-1976年11月18日)はアメリカ合衆国ペンシルベニア州、フィラデルフィアにユダヤ系の両親のもとに生まれ、生涯を通して多くの独創的な作品を残したことであまりにも有名。
今、パリのグラン・パレで好評開催中の「Matisse, Cézanne, Picasso... L'aventure des Stein マティス、セザンヌ、ピカソ… スタイン家の冒険」
のガートルード・スタインは、マティスやピカソの才能をいち早く見抜き、初期の彼らの多くの作品を買い取っていた敏腕の評論家である。
ヘミングウェイや巨匠ル・コルビュジエなど文化人と交流を結んでいた。また、ガートルード・スタインは、パリ郊外ガルシュにル・コルビュジエに設計を発注した家に住んでいた。
近年、ウッディ・アレンの映画「ミッドナイト・イン・パリ」にも主人公によきアドバイスを与える評論家として登場している。
その彼女のポートレートを撮影したのが、マン・レイである。
1915年、マン・レイは、マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp, 1887-1968)、フランシス・ピカビア(Francis Picabia, 1879-1953)らとニューヨーク・ダダ運動を創始。その後、1921年、エコール・ド・パリ時代のパリに渡り、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso, 1881-1973)、アンドレ・ブルトン(André Breton, 1896-1966)、ジャン・コクトー(Jean Cocteau, 1889-1963)らと交友を持ち、ダダイズムの一員として活躍。
シュルレアリスム的な作品も手がけ、1925年の第1回シュルレアリスム展にマックス・エルンスト(Max Ernst, 1891-1976)、パウル・クレー(Paul Klee, 1879 - 1940)、ジョアン・ミロ(Joan Miró, 1893-1983)、パブロ・ピカソらと共に参加した。
マン・レイは、2008年にパリのピナコテーク美術館でも展覧会が開かれたので、筆者も渡仏して見学した。
http://www.pinacotheque.com/?id=219
この展覧会は、上記の展覧会とは内容が違い、マン・レイを知っている人も新たな発見ができる展示である。
1910年代までのマン・レイの初期の稀少な油彩作品《ゲイシャ・ガール》《杭のある海の風景》 《うずくまる裸体》 《トーテム》 をはじめ、パリへ向かった1921年の最初の展覧会に出品された釘が刺されたアイロンのレディメイド・オブジェ《贈り物》、1940年にナチの侵攻で帰国するまで活動を続けたエコール・ド・パリ時代の作品《破壊されないオブジェ》 《修復されたヴィーナス》、実験的な無声映画《アネミック・シネマ(貧血症の映画)》、そしてセルフ・ポートレイトや “ソラリゼーション” という独自の手法を駆使した写真作品、晩年再びパリに戻って制作した代表的なオブジェ《フランスのバレエ》 《パン・パン(彩色パン)》など、初期から晩年までの彼の貴重な代表作を公開している。
その自由な発想と斬新な感覚、現代的な詩とユーモアで、絵画、版画、写真、彫刻、オブジェなど、ジャンルに捕われない、マン・レイの広範で意欲的な「創造的実験」の世界がこの展覧会で繰り広げられている。
マン・レイは、次のように述べている。
——「いろいろな変化や矛盾はあったにせよ、わたしの営為を方向づけてきたのはひとつ、というよりはふたつの動機なのです。すなわち、自由の追求と、そして快楽の追求ということです。あるなんらかの固定した様式をもつ芸術家として認定されてしまうこと、したがってその様式にしがみつくのを余儀なくされてしまうことを、わたしはひどく怖れていました。*」
*千葉成夫訳「マン・レイ自伝——セルフポートレイト」(美術公論社)より
この展覧会を体感することにより、マン・レイの創作の思想をたどってみよう。
会期:前期 2011年10月4日(火)~11月13日(日)
後期 2011年11月15日(火)~12月24日(土)
開館時間:10時より17時まで(16時半受付終了)、月曜休館
会場:東京富士美術館 常設第7室
作品数:前期23点、後期23点
作品内容:
通期)油彩5点、アクリル1点、オブジェ7点、シネマ1点
前期のみ)写真7点、インクと鉛筆画1点、リトグラフ1点
後期のみ)写真6点、インクと鉛筆画1点、リトグラフ1点、ガラス版画1点
ホームページ:http://www.fujibi.or.jp/exhi/72.html&e=348
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