田中敦子-アート・オブ・コネクティング [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
田中敦子-アート・オブ・コネクティング
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田中敦子 《電気服》 1956年 (1986年再制作) 所蔵・写真提供:高松市美術館 Ryoji Ito
東京都現代美術館で、国際交流基金、イギリスのアイコンギャラリー、スペインのカスティジョン現代美術センターとの共同企画による「田中敦子-アート・オブ・コネクティング」を開催中である。
いま世界が「具体」などの日本の前衛アートに注目している。
戦後、欧米の前衛芸術に刺激を受けながら、「今までに見た事のない」新しい芸術を創ろうとした、ストレートでみずみずしい感覚とエネルギーがあふれているからである。中でも田中敦子は、具体グループの中の女性作家として突出した才能を持つ。
前衛の女性作家として、オノヨーコや草間彌生が自由を求めてニューヨークに行き、そこで評価されたのに対し、田中は日本に留まり、自分の表現を模索し続けた。
田中敦子(1932-2005)は金山明の助言で、抽象表現へと進み、コラージュによる《カレンダー》を制作しはじめ、このときより繊細さと力強さが共存する独自の感性を発揮する。
その後、金山とともに吉原治良の指導のもとに結成された前衛団体「具体」に参加。20個のベルが順に鳴り響く《作品》(ベル)(1955年)、9色の合成エナメル塗料で塗り分けられた管球約100個と電球約80個からなるドクメンタの《電気服》(1956年)ほか、彼女のパフォーマンスやインスタレーションをとりいれた表現は具体のなかでも突出した異彩を放ち、注目を集めた。
田中敦子 《作品》1957年 所蔵・写真提供:芦屋市立美術博物館 Ryoji Ito
田中敦子 《「電気服」に基づく素描》 1956年 所蔵・写真提供:金沢21世紀美術館
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撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ Ryoji Ito
音や電気の明滅、あるいは時間といった非物質的な素材を、従来の美術表現にとらわれることなくその存在をもっとも際だたせる方法で抽出した作品である。
さらに田中はこうした試みを絵画において表現すべく、電気服の電球と配線に対応する円と線から成り立ったおびただしいヴァリエーションの絵画群を生涯描き続ける。
極端にラディカルな展開や、また淡々とした繰り返しのように一見、見えるが、すべて一つ一つの作品がつながりあった新たな試みの積み重ねであった。
具体をはじめとして、日本の戦後現代美術への再評価の気運が高まっているが、田中敦子は没後のDocumenta12(2007年)でも大きく特集されるなど、とりわけ重要視されている。
この展覧会は作家自身の監修のもとに再制作された《作品》(ベル)、《電気服》をはじめとした代表作約100点で構成され、革新性を模索し続けた田中の歩みを回顧するもの。
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昨年は、MOMA所蔵の田中の大作が大きく特別展示としてフューチャーされるなど、昨今、その評価は高まりつつある。
布が風にはためく様から音が空間をめぐるベルを発想し、さらにネオンの点滅から電気服を発想するなど、音や光を使った、50年代の田中の発想の飛躍と豊かさは比類なきものであろう。
「いままでにみたこともないものをつくりたい」と、華奢な身体に秘められたその強い意思は、2011年に生きる我々にも強い衝撃を与えている。
田中敦子 《作品 (6) 》1955年 所蔵・写真提供:東京都現代美術館 Ryoji Ito?
ネットワークで世界がつながる現在、電球の明滅、一つ一つの惑星、命の明滅を円であらわし、それをひたすらつないでいった、ネットワーク絵画は予言的ともいえよう。
アートオブコネクテング、一つの絵画ではなくそれが複数、空間を満たす事でお互いがシンクロし始める。
田中敦子 《地獄門》 1965-69年 所蔵・写真提供:国立国際美術館 Ryoji Ito?
田中敦子は現在にむけて、今もなおメッセージを発し続けている。
21世紀の今をもっても、田中の作品は、前衛だ。田中の芸術家魂に敬意を表したい。
会 場:東京都現代美術館 3F
会 期:2012年2月4日(土) ~ 5月6日(日)
休館日:月曜日? (4月30日は開館)、5月1日
開館時間:10:00?18:00(入場は閉館の30分前まで)
主 催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館、国際交流基金
特別助成:財団法人 石橋財団
協 力:NECディスプレイソリューションズ株式会社
観覧料:一般1,000円(800円) | 大学生・65歳以上800円(640円) | 中高生500円(400円) | 小学生以下無料
*( )内は20名様以上の団体料金。
?*本展チケットで「MOTコレクション」も観覧可。
?同時開催「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」とのセット券もあり。
?一般1,500円|大学・専門学校生/65歳以上1,200円|中高生700円
田中敦子 《Thanks Sam》1963年 所蔵・写真提供:千葉市美術館 Ryoji Ito
キュレーター
ジョナサン・ワトキンズ(アイコンギャラリー ディレクター)
コ・キュレーター
<日本側実行委員>
加藤瑞穂 (大阪大学総合学術博物館招聘准教授)
河崎晃一 (兵庫県立美術館企画・学芸部門マネージャー 館長補佐)
長谷川祐子(東京都現代美術館 チーフ・キュレーター)
?<スペイン側>
ロレンサ・バルボーニ(カステジョン現代美術センター ディレクター)
担当学芸員
関 昭郎(東京都現代美術館 シニア・キュレーター)
同時開催
● 「靉嘔 ふたたび虹のかなたに」 2月4日(土)‐5月6日(日)
● MOTコレクション「特集展示|福島秀子」「MOTコレクション クロニクル 1964- OFF MUSEUM」
2月4日(土) ? 5月6日(日)
☆読者プレゼント
10組20名様にご招待券 プレゼント
あて先 : loewy@jg8.so-net.ne.jp に
件名:展覧会名と会場名
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