ポーラ美術館10周年記念展 コレクター鈴木常司―美へのまなざし [美術館 ARTNEWS アートニューズ]
ポーラ美術館10周年記念展
コレクター鈴木常司―美へのまなざし
ポーラ美術館の開館10周年を記念した展覧会が好評開催中だ。
ポーラ美術館は、神奈川県箱根仙石原に森の風景の中に溶け込むように建っている。
これは、「箱根の自然と美術の共生」が建築コンセプトだからだ。
訪れてみたい美術館によくあげられる美術館なのだ。
クロード・モネ《睡蓮の池》 ポーラ美術館蔵
ポーラ美術館のコレクションは、高級化粧品会社でおなじみのポーラ創業家二代目である鈴木常司(1930-2000)が、1950年代末から40数年をかけて収集した総数約9,500点におよぶ作品群から成る。
西洋絵画・日本の洋画・近現代の日本画・版画・彫刻・東洋陶磁・日本の近現代陶磁・ガラス工芸・化粧道具など多岐にわたるコレクションは、戦後の個人コレクションとしては質・量ともに日本最大級の規模だ。
この展覧会は、コレクター鈴木常司の知られざる人物像とその美意識に関わるコレクションや彼の手がけた文化活動を、12のテーマにより紹介するもの。
中でも人気の高い印象派の巨匠モネの作品の収蔵には定評がある。
☆モネ・コレクション3つの特徴
(1)体系的なコレクション!
睡蓮、太鼓橋、積みわら・・・など、画家の特徴がよくわかる代表的な主題の描かれた作品を有す。
最初から代表的なものを網羅的に収集しようとしたわけではなく、体系的なコレクションを目指して収集した結果、現在の充実したモネのコレクションが形成されたといえる。
ポーラ美術館のモネ・コレクションは、モネの画業をたどることができるほどである。
印象派の画家たちと開催した「印象派展」に参加していた時期の前から、印象派の活動から離れ、「積みわら」、「ルーアン大聖堂」、「睡蓮」と連作を創作した時期まで網羅しており、大変貴重な作品群である。
(2)明るい色彩の作品が多い!
コレクター鈴木常司は、明るい色彩の作品を好んだという。
この傾向はモネの連作のコレクションによくあらわれており、同じ主題で描かれた作品のなかでも、より明るい色彩のものを選んでいる。
また、モネの200点以上にのぼる「睡蓮」の連作の中でも、鈴木は粗々しい筆致で描かれたものではなく、丹念に仕上げがなされた完成度の高い作品を選んでいる。
(3)バランスのとれた構図の作品が多い!
モネは若い頃より優れた構図の作品を描いている。
特に1880年代に入って場所やモティーフを定めた制作を行なうようになると、限定されたモティーフを巧みに配する構図の妙は、作品に不可欠な要素となって行く。
ポーラ美術館のモネ・コレクションは、そうしたモネの特質をよく表しているといえよう。
鈴木の丁寧さを重視する性格や、経営者ならではの厳格な美意識により、画面全体にわたって筆致の入念に重ねられた、完成度の高い作品が蒐集された。
この展覧会の図録には、コレクターの美へのまなざしがよくわかる解説が書かれている。それは、芸術や美術にどう向き合うかを指南してくれているようだ。
海外の主だった美術館からも展覧会に借用を要請され、貸し出しを行なっているポーラ美術館。
筆者も何度も海外でポーラ美術館所蔵の作品を見ている。
貸し出しを依頼されること。それは、何よりも作品を蒐集したコレクターの目を評価されていることの他ならない。
これらの作品が日本に存在することの価値を改めて感謝し、味わいたい。
併設レストランのスペシャルメニューも大変おいしくおすすめ。
パレット状の食器もおしゃれ。
会期終了まで、あとわずか。
お見逃しなく。
杉山寧《薫》ポーラ美術館蔵
2013年2月26日まで
■10周年記念イベント
☆シンポジウム
2013年4月6日(土) 14:00-16:00
「コレクションと美術館 ―大原美術館・ブリヂストン美術館・
ポーラ美術館の現場から」
個人コレクションを基盤として活動している美術館が、各美術館のコレクションの特色、これまでのコレクション活用の歴史と実績、そして今後の展望について語る。
【パネリスト】
柳沢秀行(大原美術館学芸課長)
新畑泰秀(石橋財団ブリヂストン美術館学芸課長)
岩崎余帆子(ポーラ美術館学芸課長)
【会 場】 ポーラ美術館
【定 員】 先着100名
【参加費】 無料(入場券要)
☆読者プレゼント
10組20名様にご招待券 プレゼント
あて先 : loewy@jg8.so-net.ne.jp に
件名:展覧会名と会場名
本文:ご住所、お名前
をお書きの上どしどしご応募下さい。
締切:UPした日の午前零時
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